発電所施設の健全性の研究支援

地層処分・余裕深度処分

天然バリア(地質・地下水・岩盤・コロイド)

放射性廃棄物のうち、使用済み燃料の再処理後に残る高レベル放射性廃棄物や、発電所廃棄物のうち放射能レベルの比較的高い制御棒・炉内構造物などは、それぞれ地層処分や余裕深度処分といった方法で処分される方針となっており、その安全性の確保・評価に対する様々な検討が関係機関により行われています。

当社では現在、放射性物質の漏出を抑制する地下環境(天然バリア)やセメント・ベントナイト系材料(人工バリア)に関する現地調査、室内実験、分析などを行い、電力中央研究所をはじめ、放射性廃棄物処分に関する研究を進めている機関の研究を支援しております。

火山や活断層などから離れた地下深部では地層が安定的に存在しており、また地下水の流れも緩慢であることから、放射性廃棄物の閉じ込め性能に優れていることが期待されています(天然バリア)。
当社では、天然バリアとしての深部地下フィールドの環境、処分空洞やトンネルの掘削がバリア機能に与える影響、廃棄体からの熱的影響に関する各種業務を行っております。主には放射性核種の移行媒体となる地下水と、操業時に重要となる岩盤の力学的挙動を対象にしており、その他、核種移行や水質形成の関連項目として岩石・コロイド・微生物などを取り扱っております。

現地調査など

●深部地下水の定期水質観測、地化学モニタリング、酸化還元環境調査

放射性廃棄物を処分する深部地下の地化学環境やその安定性は、放射性核種の移行挙動などを予測するための重要な要素になります。当社では地層の風化状況や地下水水質などの調査、長期的な安定性をモニタリングするための検討などを行っています。

地下水の定期水質観測の例:坑内調査(写真提供 電力中央研究所)

●岩盤挙動モニタリング、物理探査、BTV調査

地下深部の温度は室温よりも高く、放射性廃棄物の温度はさらに高い場合が考えられるため、地下空洞掘削や廃棄物の設置にともなう岩盤の安定性を予測するためには、高い温度での岩盤挙動や岩石の力学物性を把握することが重要です。当社では地下深部岩盤の加熱実験において岩盤挙動を的確にモニタリングする技術や、高温クリープ試験など安定性を適切に評価するための検討を行っています。
物理探査については、「地質地盤調査・物理探査」をご参照下さい。

岩盤挙動モニタリングの例:加熱実験(写真提供 電力中央研究所)

●ボーリング掘削水のトレーサー濃度管理(連続計測)

地下深部の地化学環境を知る上で、ボーリング掘削による岩石コアの採取やボーリング孔での採水は重要な作業の一つです。特に地下水の水質を適切に評価するためには、ボーリング掘削水によるコンタミネーション(混染)の影響を適切に評価することが重要です。当社ではボーリング掘削水に含ませるトレーサーの濃度管理も行い、適切な水質の評価に貢献します。

トレーサー連続計測の例:蛍光染料

室内での実験、分析・試験

●地下水の年代評価に関する実験

深部地下環境の安定性を評価する上で、地下水の年代(平均滞留時間)を適切に評価することは重要な項目の一つです。そのため、当社では、利用する同位体の元素抽出・分離精製に関する各種の検討や、同位体交換試験・拡散試験などを行っております。

●石間隙水の抽出と水質評価

堆積岩地域では、深部ほど圧密されて岩石の間隙が小さくなることにより、ボーリング孔での地下水採取に時間やコストが掛かるようになります。この点を解決するため、当社では、圧縮抽水法・遠心法・リーチング法などにより岩石コアから間隙水を抽出することで、より迅速な深部地下水の水質・同位体比の評価に貢献します。 また、深部地下水の水質形成にとって重要な岩石の情報を得るため、各種の固相分析や物性試験を行い、また同位体交換実験や熱水実験による検証なども行っております。

●岩石の高温三軸試験・クリープ試験

現地での岩盤挙動モニタリングと同様に、高い温度での岩石の力学物性を把握するための試験を行っております。

●収着試験

岩盤中の岩盤中の放射性核種の移行特性を把握するため、
岩石やコロイドの収着試験を行っております。

収着試験の例:嫌気条件
写真提供:電力中央研究所)
 
  • 圧縮抽水法による水質評価の検討については、電力中央研究所報告 N07012「地下水年代測定評価技術の開発(その6)-低透水性岩盤における地下水抽出法の提案-」をご参照下さい。→ 電力中央研究所(「研究報告書」ページから閲覧・ダウンロードできます)
  • 同位体分析については、「水素・酸素同位体分析」をご参照下さい。
  • 岩石の各種固相分析,物性試験については、「材料分析・各種固相分析」をご参照下さい。

人工バリア(セメント・ベントナイト)

放射性廃棄物の埋設処分にあたっては、処分地域周辺の安全性が長期間にわたって確保されることが重要な課題です。当社では、安全性を裏付けるデータを収得するために、以下のような業務を実施しております。

セメント系材料

セメント溶脱試験

おもに長期にわたって地下水と接触する際のバリア機能を調べるため、グローブボックス内で長期浸漬試験を行い、固相・液相の分析により溶脱特性などを明らかにしています。

ベントナイト系材料

膨潤性・透水性を調べるほか、化学的な劣化にともなう影響やガス透気特性を調べる分析・試験などを実施しています。 固相分析・物性試験については、「材料分析・各種固相分析」をご参照下さい。

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